トップ 差分 一覧 ソース 検索 ヘルプ PDF RSS ログイン

王宮の褥にて

王宮の褥にて

[SS一覧]

  • とにかく普通にエロなので職場なんかで見ない方が吉。
  • しろみけ氏原案。
  • とりあえず実用性を目指しつつラクスの孤独感とかツン部分を意識したが中途半端。
  • ラクスは結構頻繁に生徒を連れ込んでこんなネチョいことをしてるとか。

 


少女の手足に複雑に絡み合う光は、見たこともない魔法の文字が繋ぎ合わされてできた魔法の縄だった。もがいても自由にならない手足をばたつかせ、モッテはベッドの上で魔術師を睨みつける。
 いずれは花開くであろう美貌を窺わせる幼い容貌も、いまは焦燥に厚く塗りつぶされている。精一杯自分を奮い立たせているものの、怯えを隠しきれてはいなかった。そこに、王宮の恐怖の象徴として語られる蜘蛛の暗殺一族の威厳は残されていない。
「いい格好ね」
「っ、うるさい、黙れ魔女めっ!! 衛兵でもなんでも呼べばいいだろう!?」
 安い挑発にさえモッテは反射的に怒鳴り返してしまう。
 かつて兄を殺めた魔女を前にして、無力な少女はそうやって怒声を返すことしか許されていない。不甲斐なさに視界が滲む。
「お前は兄様も、こうしていたぶって殺したんだろう!? 今すぐその報いを受けさせてやるっ!!」
「……そう。聞き分ける気はないのね。いいわ」
 す、と席を立ったラクスは、部屋の扉に指を添え、わずかな呪句を紡ぐ。
 同時、がきりと重い音を立て、扉が軋む。まるで見えない錠前が下ろされるかのようだった。
「こんな場所に忍び込んでくるぐらいだから、もう少し頭が回ると思っていたのだけど。貴方達を買い被っていたようね」
「っ、黙れっ!! 兄様を侮辱するなっ!! この、魔女めっ!!!」
「評価を落としているのは貴方の愚かな行ないじゃない。
 ……ねえ、ところで知っているかしら? 貴方がそうやって罵る悪い魔女はね、契約した魔神を喜ばせるために処女の生贄を捧げるそうよ?」
 ラクスが呪印を軽く握り潰すと、少女の身体を戒める魔法の縄が音を立ててきりきりと軋み始める。より強く四肢を拘束され、モッテは思わず呻きを漏らした。
「このところあまり良い獲物に恵まれていなかったのだけど。偶然というのはあるものね。警備の連中の慰み者にくれてやるのも勿体ないし」
「な、……何をっ ――んぅっ!?」
 叫びかけた少女の唇に、もう一重の魔法の縄が絡みついて口を塞ぐ。さらに、少女を戒める縄はまるで意志を持つかのように蠢き、少女の膝を開かせ、股間を露にする無防備な姿勢で固定する。羞恥と恐怖にモッテは抗おうともがくが、魔法の力のもたらす強制力は絶対である。
 抵抗など紙のように打ち破られ、モッテは大きく脚を広げたはしたない格好でベッドの上に転がされてしまう。贅を尽くされた王宮の寝床は信じられないほど柔らかく少女の身体を受けとめるが、不出来な暗殺者の仮面を剥がされたモッテにはそんな事に気付く余裕すらない。
「無駄よ。叫んでもどうせ聞こえないわ」
「っ、んぅっ、っ、うぅっ!?」
 拷問とは、次に何をされるかの恐怖で人を犯す方法だという。だとするなら、この魔術師の行ないはまさしく理想的なそれであった。惨めにもがくモッテに、ラクスは小さく唇の端を持ち上げる。
「――まずは、処女かどうか確かめないといけないわね」
 薄闇の中の、魔術師の微笑。
 モッテは声を失って、全身を凍り付かせた。

 

 

 

「っ………んっ……んむっ……」
 首を振り、必死に拒絶を試みるモッテだが、呪詛によって縛り上げられた手足はその用途を失ったかのようにぴくりとも動かない。服の裾は裂かれて白い肌が剥き出しになり、少女は抵抗を許されぬまま、薄布の上から一番敏感な部分をなぶられ続けていた。
 直接ではなく、布一枚を挟んだゆえのもどかしくも切ない刺激がまだ未成熟な少女に相応しい快楽を導き出してゆく。
「形も乱れてもいないし、色も綺麗ね。まずは合格かしら。……でも、経験がない割には随分と淫乱ね。独り遊びが過ぎるのじゃない? ……期待外れだったようね」
「っ……!!」
 空け透けな言葉に頬を紅潮させてしまうモッテ。しかしそんな初々しい反応では、魔術師の問いに答えているのと同じことだ。
 真教では自慰を命を産み出さぬ罪深き行ないと断じている。たとえアーの教えに背く者であっても、乙女が自分の快楽のために身体を慰める事は厳重な禁忌とされた。
「……違うとでも言いたげね。なら、これはどういうことかしら?」
 魔術師は微笑みながら淫蜜にまみれた白い指先を、にちゅり、とモッテの目の前で弄んでみせる。糸を引いて垂れ落ちんばかりの淫らな雫から、少女のこぼす甘い匂いが濃密に立ちこめる。
「っ……」
 耐えきれず、ふいと顔を反らしたモッテの白い喉に、ラクスの舌が触れた。
「ひゃんっ!?」
「可愛いものね。あれだけ殺す殺すと喚いていて、酷い様。
 いいから黙って目を閉じてじっとしていなさい。あなたのような暗殺者なんて、処女でないならロクな使い道もないんだから」
「っ、痛ぁ……!! や、ゃだ…っ……や、やめっ」
 下着の上から食い込む爪の鋭い痛みに貞操の危機を覚え、モッテは背筋を震わせた。そんなモッテの白く柔らかな喉に歯を立て、魔術師は唇と舌を巧みに操り、ゆっくりと這わせてゆく。
 モッテはフォーゲルヴァイデの擁する暗殺一族の生まれだ。彼等のうち成人した者は皆“蜘蛛”と呼ばれ、身体のどこかに蜘蛛を象った刺青をもつ。必要ならばその身を投げ出しても主の命を遂行する。
 本来ならば、モッテも“蜘蛛”一族の暗殺者として、閨でのあしらいを含め、そのような技術を身に付けている年齢であった。
 しかし、フォーゲルヴァイデ家の没落と共に彼等一族もその技術もまた散逸し、モッテが兄から得られたのは辛うじて危機を逃れるだけの身のこなしと、いくつかの毒だけ。彼女が身も心も偽って貴族を篭絡するようなすべを知らぬまま育ったのは、歳相応の娘として幸せに生きてゆくことを願う兄達の希望でもあったのだが――当のモッテはそれを知る由もない。
「我慢できなくなったのなら、いつでも教えて頂戴。ほら。こんなに蕩けさせて……下着の上から絡みついてくる。解るかしら?」
「ぅ…く……ふ……っ、やんっ……」
 ラクスは執拗に、薄布越しの秘所への愛撫を繰り返す。肌触りのよい下着を挟むことで、敏感すぎる少女の秘所を程良く弄ぶ様は、魔術師がこの巧みな指使いを昨日今日身につけたのではないことを容易く知らせている。
 たっぷりと淫蜜を吸った布地はモッテの股間にへばりついて、その内側に隠されるべき部分をつまびらかにさらけ出していた。
 ふっくらと盛り上がった白い丘、いまだ慎ましやかに淡毛すらもないなだらかなその下には、ほのかに色づきほころびた花片が桜色を覗かせている。小刻みに蠢く魔術師の指先は、下着の隙間からその内側に侵入し、古書を紐解くかのような的確さでモッテの敏感な部分をなぞり上げてゆく。
「ぁう…っ、あっ、あ、ぁ、だ、ダメっ…っふ、うっ、……〜〜、ッッ!!」
 ぴん、と敏感な花芽を弾かれ、モッテは甘い悲鳴を上げた。
 胎奥へのを侵入を試みようとする細い指先に反応して、少女の秘裂はきゅぅと閉じられ、中にたっぷりと蓄えられた蜜を吹き上げる。背筋を這い登る快感に、モッテの腰が甘く疼き、少女は声を上げぬように必死でシーツを噛み締めていた。
 とろけるように熱くほころびた細く狭い膣口を丹念になぞり、こね回し、魔術師はそこに純潔の証が確かに残っていることを確認したようだった。
「……残念だけど、嘘ではないようね。良かったじゃない、命拾いできて」
「………っ」
 つぷりと引き抜かれた指が、はっきりと解るほど透明な蜜の糸を引く。
 荒い息を押さえ込みながら、ひとときの快楽地獄から解放されたモッテは辛うじて動く視線だけでラクスを睨み付ける。
 しかしその視線にも力は無い。まるで熱病に侵されたように、モッテの身体の芯は熱く疼いていた。上気した頬、潤んだ瞳。それはまぎれもなく愛しい相手に捧げる乙女の表情だ。
 唇を噛んで荒い息を押し殺し、シーツに爪を立てる少女に、蜘蛛の掟に縛られた一族の面影はない。熱く疼く胎奥を鎮めようと、モッテは魔術師にに気付かれぬようさりげなく腿を擦り合わせる。が、そんなもどかしい刺激ではとても足りはしない。敏感な花芯は中断された愛撫を求め、じんじんと包皮の中で疼いていた。
「なあに、そんなに物欲しそうな顔をして。もっといとおしげに抱き締められて、優しく舐めて欲しかったのかしら?」
「……な…ッ……!!」
 くすくすと笑いながら、ラクスはモッテの未成熟な胸の膨らみを弄ぶ。呪詛の縄で戒められた突起の先端を、魔術師の唇がそっと口に含んだ。
「立場を弁えなさい。『ご奉仕(それ)』は貴方が願い出ることでしょう?」
 胸を包む肌着に、魔女の唾液がとろりとこぼされ、小さな唇と舌によって塗り伸ばされてゆく。秘儀を執う魔術師は、常日頃から香草を練りこんだ蜜や薬酒、香などで身体を浸し清めている。それゆえに、ラクスの身体は触れるだけで焦がれるような快楽をモッテにもたらした。
 服の上から浸透する甘い疼きが、モッテの小さな膨らみをやんわりと包み込んでゆく。程良い大きさを確かめるようにやわやわと食いこむ魔術師の指が、暗殺少女の身体に新たな快感を刻む。
「ぅ、くぁ……ぁあっ」
 千の毒を舌峰に乗せる魔術師の唇から覗く、桜色の舌。人称変化変格動詞を含めておよそ四万七千にも及ぶ古典天宮語の発音を自在に操るラクスの唇が、絶妙な悦楽を紡ぎ出し、緩やかに少女の肌を這い降りる。
 かの伝承に有る、カセリナの嘘舌もかくやのごとく。たちまちのうちに、モッテは魅舌がもたらす快楽の虜になっていた。
「ぁああっ、ふ…ざけるな、っ、だ、誰が、お前っ、ぁあっ……なんかに、…っ…!!」
「まだ口の利き方が解らない? ……まあいいわ。これからきちんと躾てあげる」
「ひぅあぁあああっ!?」
 不意に。ラクスはモッテの股間に指を伸ばし、二言三言の呪句を紡いだ。と同時、常人には見えない魔法の縄が意志を持ったかのように蠢いて、少女の脚の付け根をぎゅうと強く引き絞った。
「ぁああぁあああっ!? だ、だめっ、そ、それ、やめ……っ、こ、擦れ……っ、や、やだぁっ、いやぁ……っ!!」
 濡れぼそった秘所に食い込む呪詛の縄が、もがくモッテの身体を容赦なく縛りあげる。ただ締め上げるだけではなく、振動を伴って前後に激しく。たっぷり焦らされたところに強烈な刺激を撃ち込まれ、少女は髪を振り乱して叫んだ。幾重にも複雑に絡みつく快楽の束縛に、哀れな暗殺者は蜘蛛の誓いも忘れて翻弄される。
 熟れ始めた果実を握り潰すかのように、不可視の縄がじゅぶっと沈みこんだ。大量の蜜が吹き零れて少女の股間を濡らす。すでに蕩けた淫蜜は少女の腿までをたっぷりと濡らしていた。
「ぅああああああっ!? やめ、っ、やめ、てぇぇ……っ」
「聞こえないわ。相手にものを頼む時には必要な言葉があるでしょう?」
「ぁ、だめ、……っ、だめ、あぁ、や、やめっ……やめて……くだ、さいっ……、やめて、やめてくださいっ、おねが、い…おねがい、しますぅ……っ!!」
「可愛い声ね。興奮するわ。……もっと聞かせて?」
「っ、あ、あっああ、あああっ、あ、あ!! んぅっ……っ!!」
 仰け反ったモッテの唇を、もう片方のラクスの指が陵辱してゆく。白く細い指は、少女にさらなる奉仕を求めるようにその舌を絡め取った。顔を近づけただけで頭を蕩かす甘い香りに、モッテはたまらず魔術師の指先に吸い付いてしまう。
「……はしたないわね。そんなにがっついて」
 鋭い言葉の刃も、すでに昂りを煽る助けにしかならなかった。モッテは夢中になって口腔を犯す指先に舌を絡め、ねぶるようにして吸い上げる。いまだ無垢なままの少女はかつて経験したこともない快楽の檻に囚われていた。
「んむっ…ちゅ……れるっ……く…ぅんっ……」
 上目遣いになって、モッテはラクスの指を吸い上げる。それはまさに、恋する相手に愛をねだる乙女の姿。
「ん…ちゅっ……んむっ……れろっ…ふ……むっ……」
 爪の先端から指の付け根まで、許しを請うように繰り返される奉仕を満足そうに眺め、ラクスはくい、と魔法の束縛を引き絞った。
「っああああああああああああぁぁあっ!?」
 仰け反る少女の唇から溢れる唾液が糸を引いて、白いシーツに染みを落としてゆく。
 魔法の縄は無慈悲に捻り、ねじられ、柔らかな股間に食い込んで、一度絶頂に達した少女を何度も何度も快楽の頂きに突き上げていった。

 

 

 

ラクスに乙女の心を弄ばれ、がくがくと身体を痙攣させながらも、モッテはきつく握り締めた指先の痛みでわずかな意識を取り戻していた。
 七割は蕩けてしまっているような頭の中で、残った理性を必死にかき集める。
(――指、手、腕、肩、……)
 散々に股間をいたぶり続けるのに使われたせいか、しばらく前から、自分を戒める呪詛の拘束がわずかに緩んでいることにモッテは気付いていた。無論自由には程遠いが、右腕をわずかに動かすくらいなら不可能ではない。
「ほら。どうしたの。言って御覧なさい。……どうして欲しいのかしら?」
 余裕ぶって微笑む魔術師の瞳を、確かな情欲の熱がよぎる。
(ダメだ……流されるな、感じちゃ、ダメだ……っ!!)
 つぅ、と顎をなぞりあげるラクスの指に狂おしいほどの渇望を覚えながらも、モッテは最後に残った自制心にしがみ付いて、懇願の声を抑えこんだ。今すぐにでも、あの細くひんやりとした指でまだ誰にも触れさせたことの無い場所を引き裂いてもらって、身体の奥を無茶苦茶に掻き回されたい。……そんな衝動を必死になって捻じ伏せる。
(っ、あ、っ)
 ごきり、と間接を外し、人体には有りえない角度で腕を回すと、モッテは魔法の拘束を打ち破ってうなじの髪留めから針を引き抜いた。フォーゲルヴァイデの蜘蛛が扱うのは、口から入り臓腑を侵す毒だけではない。触れた先から肌を腐らせ肉を焦がし、骨を灰にする――そんな毒もある。
「……っ、」
 最後の力を振り絞って、モッテはゆっくりと唇を開いた。
 幸いにして、まだ、ラクスはモッテに気付いていない。
「やめ、ない……でぇ……っ」
 演技、ではない。口をついて出た言葉は実際にモッテの願うことでもあった。
「ふふ……そんなにいやらしい顔をして、おねだり? ……んむっ……」
「んぁぅ……っ!!」
 容赦無く、唇を奪われる。粘膜どうしの触れ合いは、敏感になっていたモッテの意識を再び絶頂へと導く。すでにコツは先刻の指先への奉仕で理解している。舌がとろけ、頬肉の内側が差し込まれてくる魔術師の舌を悦ばせようと蠢いて、甘い唾液を絞り取るように絡みつく。
 甘い唾液を絡めながら唇を重ねてくる魔術師の舌技に、半ば意識を奪われながら――それでも最後の最後に残ったひとかけらの理性を奮い立たせて、モッテは魔術師の首筋に毒針を突き刺した。
「――――ッッ、!!!」
 やった、という手応えが確かに伝わり、同時にモッテは全身が浮きあがるような錯覚を覚えていた。
 ぷつっ、という、肌を裂いて魔術師の首筋に埋めこまれる細い針。
 その感触が少女の堪え続けていた均衡を崩し、モッテは快感の嵐の中に飲み込まれる。胎奥から一気に溢れ出した甘美な熱が身体の端々まで行き渡り、ありとあらゆる部分が溶け落ちてゆくかのよう。
(ぁああぁあ……ら、め……飛んじゃうぅ……っ、!!)
 睦合いの最中に相手を殺めるという異常事態は、まだ幼く未成熟なモッテの感情ではとても処理しきれない。擬似的なものであれ生命を紡ぐ行為の最中に、生命を奪う行ないを織り交ぜるという結果は、モッテを大きく天空へ突き上げる。小さな死の寄り集まりが少女を襲い、容赦無く蹂躙する。
(ぁ、あ、あっ、あ、ぁ、あっ、あぅあっ、ああぁあぅ……っ♪)
 がつん、と。幻の一撃が少女の胎内奥深くを抉る。
 大きく身体を仰け反らせ、生涯初めての絶頂へと到達するモッテ。無論一度だけではない。寄せては返す波のように、大海の嵐に翻弄されるように、モッテは次々とその快感のなかに飲み込まれていった。

 

 

 

「はーっ、はぁっ、……っ…ぁふ……っ」
 大きく息をつきながら、モッテはぼんやりと澱む視界の中に動かないラクスを見下ろしていた。
 魔法の拘束は緩やかに力を失っていたものの、途方も無い絶頂の余韻が、今もなおモッテの四肢を縛っている。際限無く敏感になった身体は、わずかな衣擦れすら極上の愛撫に変えていた。できるだけ身動きをしないようにしながら、少女は昂り続ける身体が冷めるのをじっと待つ。
「は、はっ……はーっ……はぁ……っ・・…」
 その上に覆い被さったまま、ラクスもびくびくと四肢を痙攣させていた。
 無論、こちらは快楽に身をゆだねているわけではない。その様が命を細らせ死へ突き進む歩みであることをモッテは十分に知っている。
 顔を伏せたまま力を失ってもたれかかる魔女の身体の重さは鬱陶しくもあったが、同時にそうしてゆっくりと朽ち果ててゆく魔女の哀れな様子は、モッテに大きな達成感を与えてもいた。
(やった……あたしが、やったんだ……っ)
 ついに仕留めた兄の敵。憎い仇敵を葬り去ったという事実が、ゆっくりとモッテの頭の霧を拭い去ってゆく。大熊ですら激痛で狂い殺す凶毒だ。いかなフェルゲンの魔女とて、抗することなどかなわないだろう。
(っ……落ち付け、まだ。浮かれるなっ……)
 思考能力の戻ってきた頭で、モッテは自分に言い聞かせる。相手はエステルランドの王宮に巣食う魔女。あの兄を殺した女だ。油断は絶対に許されない。首を狩り落とすくらいしなければ、平気で生き返ってくるかもしれない。
 ――そう思い、モッテが揃えた鋭い爪をラクスの首筋へと突き立てた、その瞬間だった。
「ふぁああああああああぅぅああああっ!?」
 一度は緩んでいた呪詛の縄が、恐ろしいまでもの力で再度モッテを縛り上げたのだ。今度は手足どころか指までも、自由になる部分などなにひとつ残さぬように、少女の身体が拘束される。
 何度となく絶頂に突き上げられ、敏感になっていた部分を鋭くえぐられて、モッテは柔らかなベッドの上でもがく。膣口に溜まっていた蜜がぷしゅう、と吹き出してシーツを汚す。
「……な、っ……なん、で……!?」
 そこに転がっているのは、哀れな死体などではなかった。ゆらりと身体を起こしたラクスに、モッテは混乱したまま胸中の疑念を吐露する。
「毒ね? 悪いけど、効かないのよ、そんなもの」
 フェルゲンに巣食う魔女。……彼女が不老不死であるという噂など、今の今までモッテは忘れていた。そんな事が、あるはずがないと、そう思っていた。
 ――では、目の前で平然としているこの魔女は一体何だ?
 つまらなそうに、首筋に残っていた毒針を抜き去って、ラクスはゆっくりとモッテの側に顔を寄せる。濡れた桜色の舌がモッテの頬を這いまわり、少女は我を忘れたように快感に身体を震わせる。
「あ……ぁ……う」
「素敵ね。反抗的な子は嫌いじゃないの。特に貴方みたいな諦めの悪い子ならなおさらね。それだけ虐め甲斐があるもの」
 身動き一つできないモッテの眼前で、ラクスは自分の首にあった毒針を弄ぶ。先の見えないほど細く鋭い針には、まだ十分すぎるほどの毒が残っている、ひと刺しで命を奪う、紛れもない死者の指先だ。
 針の先端をモッテの顎にふれさせながら、ラクスのもう一方の指は少女の腿を撫で回していた。下着の隙間から蛇のように侵入し、花片をなぞり蜜をこねる魔術師の指使いに、モッテは成す術なく声をあげてしまう。
 死の淵で紡がれる快感に、寄る縁を失った少女の意識はぐるぐると混濁してゆく。
「これで貴方を刺してあげてもいいのだけど。どうせ付けるなら、一生消えない傷の方がいいかしらね?」
 秘所をまさぐる指が、揃えられて伸ばされる。ラクスが何を言わんとしているかを悟り、モッテはか細い悲鳴を上げた。
 細い魔術師の指でも、まるで経験のないモッテには鋭い刃のようだ。
「や……やめ……っ」
「嫌よ」
 笑顔で。ラクスはモッテの耳朶に囁きかける。ぞくりと身を震わせる少女に満足するように、長い吐息を一つ挟んで。
「嫌がられる方が、興奮するの」
「ぁ、あ、だ、っ、……っ、〜〜っ!!、……っ!!」
 魔女の指先は、丁寧に折りたたまれていた処女地を蹂躙した。狭くきつい処女孔を奥深くまでえぐり、折り重なった新鮮な柔襞が絡みつく感触を面白そうに責めなぶる。ただでさえ、人の指先は人体でもっとも敏感な場所の一つ。秘儀を扱うラクスにとって、そこは無垢な少女を味わうのに最適の場所でもある。
 引き裂かれた純潔の証が爪に絡む感触を堪能しながら、ラクスは破瓜のショックで声を失っているモッテの耳朶を丁寧に食んだ。
「痛そうね……大丈夫。そのうちすぐに慣れるわ。皆そうだったもの。
 さあ、もっと可愛い声を聞かせて?」
「ぁ、あああっ、あ、あっ、っ、ああああっ!?」
 入り口近くの浅いうねりや、蜜の溜まったねじれた襞の隙間。男を知らない無地の処女地の中に潜む幾つものスポットを掻き回し、羞恥に染まって包皮に潜りこんだ花芯を弄ぶ。
 これは生殖の為とは違う、純粋に快楽のための身体の繋がりだ。この時代、たとえ愛する相手であってもそれを悦ばせる寝所の技術など、快感に溺れ身を堕落させる悪しき行ないとされている。それゆえモッテの体験している快感は、この時代の多くの乙女にはまるで未知のものであった。
 魔術師のもたらす技巧に溺れ、たちまち次々と濃密な蜜を吹きこぼすモッテを眺めながら、ラクスは愉しそうに笑みを浮かべた。
「まだまだ夜は永いわ。解るかしら? さっき、この部屋の時間を少しいじったの。たっぷり時間をかけて教えてあげる。この世界の秘密を。貴方が知りもしないような事まで、全部、何もかも」
「っ、あ、…っ、……〜〜っっ!!?」
「まあ、もっとも貴方が覚えていられるようなことなんてほとんど無いでしょうけど。でも止めてはあげないわ。これは私に逆らった罰よ」
 これまで、モッテを責めなぶることに終始していたラクスの指が、ゆっくりと自分の胸元に伸びた。ガウンをまとめる飾り紐が解かれ、前に開いた夜着の隙間から陶器のように真白い魔術師の肌が覗く。知識と秘儀を詰めこんだ小さな魔女の身体は、確かにじっとりと興奮の汗を滲ませている。
 薄闇の中、ふわりと立ちこめる甘い匂いがひときわ強くなった。
「あ…ぅ……」
 全身を拘束されたまま、ねだるように身体を寄せようとするモッテに応え、ラクスはするりとガウンを脱ぎ捨てた。すでに魔女の身体を覆うものはなにもない。
「憎いかしら。貴方を弄ぶ私の事が? ……それなら憎みなさい。一生を掛けても忘れられないくらい、貴方を辱めてあげる。貴方はこんなにも可愛いものね。あの男みたいに殺してしまうのは勿体無いわ」
 モッテには、理解できていただろうか。
 己がすでに、この乙女の姿をした小さな魔神の編み上げた檻のなかに囚われてしまっているのだということを。
「だからいくらでも追ってきなさい。いつまでも、いつまでも、ね」
 最後に、言葉を紡いで、ラクスは再びモッテの唇を塞ぎ、十分に少女の唾液で口を湿らせると、その柔らかな舌で今度はモッテの秘所に吸い付いてゆく。
 もはや後には言葉はなく、甘い声と蕩けるように繰り返される濃密な絡み合いだけが、深く静かに折り重なって、王宮の一室を満たしていった。


  • 某日深夜、しろみけ氏と妙なテンションでえろい話をしていたところ出来上がったお話。多分あのセッションのときこんな展開になっていたんじゃあるまいかという。
  • しかしこのあとラクスはモッテに世界の真実だの聖痕だの殺戮者だのの話をしているわけで、ある意味援助交際でやることやっておいてから女の子に『こんなことするもんじゃない』『もっと自分を大切にしなさい』とか言ってるオジサンと似たよーなものである。
  • とりあえず書いてみると言ったらみけ氏に切望されたので経験点欲しさに頑張ってみたが、女の子同士でガチなエロは区切りがなくてなかなか難しかった。個人的には百合はもう少し気恥ずかしい成分多めというか、ソフトな方面のほうが書きやすいなぁと思う。男が出てくると結構もっとえぐいことも平気でできるあたり自分の嗜好に新たな発見。
  • 秘儀魔法使いらしい責め方がまるっきり思いつかなかったので香草の匂いとかページをめくる指先とか古代天宮語を操る舌とかやけにオサレな設定後付け。書ききれたのはある意味長年培った厨房力のおかげである。
  • ラクスが実に荒んでいるのは多分、イスマリア女学院で先生になって生徒に手を出しまくっていてうはwwwwおkwwwwだったところとクビになり、至聖墓の試練とかに挑んだものの思い通りの結果で、さらに王宮に呼び戻されてみればイシドール・メッケラーごときの小物に散々でかい口を叩かれていたりでいい加減ストレスが溜まっていたからに違いない。(ないのか)
  • しみじみ思ったが、エロ小説で女の子のあえぎ声をうまく書ける人ってすげえなぁと思った。アレは才能だと思う。みさくらとかはある意味でホントに神。
このページの添付ファイル