トップ 差分 一覧 ソース 検索 ヘルプ PDF RSS ログイン

ゲヘナセッション録

第1話 アルディンのランプと愚者の魂 【GM:真性】

ゲヘナ最大の都市、瓦礫の街シェオール。紫杯連「鐘杏」の幻鏡師クルシュ、炎術師ハマーディーン、刀士リフラの駆け出し享受者3人は、シェオールの幻鏡工房を管理するクドビフから幻鏡を自在に操る魔法のランプを持ち出した男を追うように命令を受ける。
 ランプは偉大な魔術師アルディンの手によるもので、周囲に術者の望んだ幻鏡域を生み出すものだという。盗人を見つけ出した一行は、ランプから次々に呼び出される幻鏡をかいくぐり、からくも盗人を捕らえることに成功し、事件の裏側にクドビフの陰謀があることを突き止める。
 幻鏡工房に取って返すも、クドビフは間一髪の差でシェオールを脱出していた。ランプを取り戻したことで支部長エザレラの覚えも良くなった一行は、これを機にグループを組むことを決めるのだった。

 

第2話 アクバルと40人の盗賊 【GM:どみ】

サッタールという豪商から妖霊を閉じ込めた壷を奪った盗賊アクバルから、壷を奪い返して欲しいと依頼されたクルシュ達。里帰り中のハマーの穴を埋めるため新メンバーの神語術師ガシムを加え盗賊団を追ううち、アクバルが壷から呼び出した妖霊で仲間の盗賊たちと近隣の町からの警備隊を全滅させたことを知る。
 生存者の証言から近くにあるアクバルの産まれ故郷の村に向かった一行。そこでアクバルは妖霊に命じて村を襲わせ、村の中央、モスクの廃墟に陣取って村を占拠していた。
 酒盛りで眠りこけたアクバルの目を盗み村人を助けたクルシュ達は、アクバルの連れている妖霊が実は妖霊の振りをした中位邪霊リュギキュイスであることを知る。アクバルは邪霊に囁かれ堕落してしまっていたのだ。
 恐るべき力を秘めた中位邪霊リュキギイスに対抗するため、アクバルの持っていた『太陽』の世界意志の雫を使い、邪霊の能力を封じることに成功、リフラの活躍もあり辛うじて勝利を収め、村を解放することに成功したのだった。

  • アクバルに邪霊を操る壷を売ったという謎の男、紫豹の登場。その目的は、正体は。全ては謎のままであった。

 

第3話 知識は夢か、幻は自由か 【GM:真性】

逃亡したクドビフが紫杯連「鐘杏」の本拠地言論都市ウァスに潜み、『図書館』の幻鏡域に秘められた禁断の知識を狙っていることを知らされ、クルシュ達はエザレラ直々の命令で一路ウァスを目指す。
 厳重に管理された幻鏡域に侵入することは一見困難であるかのようにも思えたが、クドビフはごく一部の幻鏡術師しか知らない秘術【幻鏡歪曲式・通廊】を使い、幻鏡にトンネルを空けていたのだ。
 ジャハンナムとは勝手違う幻鏡域の中で苦戦しながらも、クルシュ達は激しい戦いや罠を潜り抜け、クドビフを追い詰める。その時現れたのはなんと邪霊であった。クドビフに禁断の知識を求めるよう誑かした邪霊を討ち、どうにか騒動を治めることに成功したクルシュ達。
 この功績とまだ見ぬ幻鏡術【幻鏡歪曲式・通廊】を持ち帰ったことでクルシュはエザレラに支部の幹部候補として認められ、シェオール支部での昇進の第一歩を踏み出した。その先にどんな困難が待ち受けているのかも知らぬままに……
 
 

第4話 葬送の刃が炎に踊る 【GM:どみ】

かのアリー・ターリブと並ぶ伝説の刀士、アフマド。彼の持っていた冥極刀はアフマドの死によって呪われた魔刀〈闇を食むもの〉となり、持つものを操り殺戮の限りを尽くして獄を呼び寄せる魔刀と化していた。
 名も知れぬ暗殺士からこの魔刀〈闇を食むもの〉の売買を持ちかけられ、真贋を確かめようとした商人フランムからの依頼で『溶鉱炉』の幻鏡域を持つ銘刀都市タベルの鐘杏支部・刀術士ギルドに向かった一行。恐らく盗品であろう魔刀の行方を追ううち、一行は件の暗殺士が殺されている現場に出くわす。
 暗殺士は魔刀の誘惑に耐え切れず、自分を斬ってしまったのだ。魔刀を持ち去った犯人が鐘杏の鳥人の享受者であったことを突き止めたリフラ達は彼を見つけ出し、からくも撃退する。一行は魔刀〈闇を食むもの〉をタベルの溶鉱炉の幻鏡へと投げこみ、積年の呪いを解き放ったのだった。

  • 暗殺士が手に入れるその前、魔刀を封印しようとした神語術師も非業の死を遂げていた。神語術師に〈闇を食むもの〉を渡したのは、またも紫豹という男だったという。
  • ハマーが魔書に問うたところ、紫豹の目的を知りたいならば巨魔(マーリド)について調べてみろとの助言があった。

 

第5話 歪んだ鏡に映りし地上 【GM:真性】

勢力混在地域のとある遺跡に出現した幻鏡域に、一本の剣があることが判明した。アルディンのランプと同様に幻鏡の力を有し、幻鏡域や獄を切り裂いて通路を開くという特性を持つというのだ。エザレラからの密命を帯びて遺跡に入ったクルシュ達は、その奥にもう一つの異世界を見る。
 緑の太陽が輝き、炎の代わりに黒沙が、風の変わりに水がうねる異貌の世界で、不思議な妖霊や剣を守護する髑髏の騎士と戦い、剣を確保したクルシュ達。クルシュが剣を手にしたその瞬間、まるでそれを待つかのように異世界は崩壊を始め、跡には遺跡のあったことすら分からない砂漠が広がっていた。
 このような剣を求めた理由について不審を抱いたクルシュはエザレラを問い詰める。しかしエザレラは真意を隠し、クルシュに期待していることだけを告げて去ってゆくのだった。
 
 

第6話 幻の谷に見るは黄金の幻鏡 【GM:どみ】

近くの村から魔物を追い払って欲しいとの要請を受け、鐘杏が派遣した享受者達が帰ってこない――そんな報告を受け、クルシュ達はエザレラから調査を命じられる。その途中のオアシスでキャラバンと遭遇し、不自然に散らばる金塊を発見する一行。
 結局、村には享受者は到着していなかった。村を脅かす砂豚の群れを撃退し、オアシス近くの岩山に見慣れぬ男達が出入りしている事を知る一行。どうやら砂豚の群れは彼らに住処を追われ、村を襲撃していたらしい。
 岩山を探索するうち、旅人を連れて一人の男が現れる。彼等は旅人達を無理矢理近くの幻鏡に押し込めると、しばらくして金塊を運び出していった。
 なんとこの幻鏡の中には、見たものを黄金に変えるバジリスクの変種が棲み付いていた。男達は袈唇の享受者で、ここで黄金に変えた旅人を溶かして金に変える非道な行ないをしていたのだ。幻鏡域を取り戻した一行を褒め称え、エザレラは報酬を約束する。

  • エザレラは黄金の幻鏡域を確保したものの、即座に閉鎖する事はなかった。何らかの資金源にされるような会話があり、リーダーとの間で不信感が募る。
  • 金塊を売りさばいていた商人達は行方をくらましていた。袈唇に通じていた彼等の向かった先はようとして知れない。

 

第7話 【GM:真性】

参った。この話だけまるで記憶に無い。起きたことだけ記述。
 幻鏡の剣奪取の任務以来、エザレラは急速にクルシュとの関係を深めていた。それは期待の新人とそれを支援する支部長という枠を超え、裏に深謀すら感じさせているものだった。リフラたちがエザレラの思惑に疑念を深めるなか、クルシュはまたもエザレラから密命を受ける。
 クルシュが遺跡の中から持ち帰った数冊の本を受け取り、エザレラは静かに微笑む。そして彼女は自分の思惑を語りだした。
 エザレラは20年前の大抗争で滅ぼされた旧五大紫杯連のひとつ、燐誡の指導者バジ・フォルバブーの娘である事を明らかにし、クルシュにそれに協力するようもちかける。彼女は燐誡再興とバジの反魂を目的に、獄や幻鏡に道を作る幻鏡術師を探していたのだった。

 

第8話 西より来たる森の騎士 【GM:どみ】

バザールに現れた、フルプレートにハルバードを握った行き倒れの巨漢。レオハルトと名乗った彼は、シェオール西の幻鏡域、森と湖の国から訪れた幻鏡の向こうの人間だった。レオハルトは城に怪しげな術師を招いて権力をほしいままにする貴族達を倒すため、病弱な姫君を癒す希望を託して頽廃の果実酒を探しにやってきたのだ。
 レオハルトの誤解を解き、森の幻鏡域を訪れた一行は、城に巣くう魔術師がもと鐘杏所属の享受者で、邪霊に通じるという不始末を侵し両目をえぐられて放逐された邪眼使いである事を知る。姿を消し暗殺をおこなう魔法生物の妨害を掻い潜り、魔術師を追い詰める一行。彼は湖の中でサーペントを育て、鐘杏に復讐するための巨大な魔物、ヒドラを造ろうとしていた。
 魔術師は両目の代わりに世界意志の雫を与えられていた。紫豹によって堕落させられた魔術師を倒した一行は、不可解な紫豹の行動をいぶかしみながら森と湖の幻鏡域を後にしたのだった。

  • 紫豹は一人ではなく、複数のメンバーによる組織であることが判明。
  • 森と湖の幻鏡域には安定した幻鏡の回廊が続いていた。伝わる伝承では界螺の享受者が開けたものだとされる。クルシュ以外にも【幻鏡歪曲式・通廊】を使える者がいるのだ。

 

第9話 黒き腕は偽りを紡ぐ【GM:真性】

ジャバド。その名を聞けば誰もが思い出すシェオール鐘杏の元支部長であり、身長2mを越える炎術師のバアさんである。大抗争以来現役を引退し、今は支部の娼館で隠居生活を営んでいる彼女は大いに荒れていた。
ジャバドの愛人である娘が行方不明となったというのだ。若男女見境なしのジャハドの暴走を抑えるため愛人の捜索をはじめた一行は、近くの遺跡でかの愛人が殺されていることを知る。なんと間の悪い事に同時期に界螺の享受者も行方を断っており、愛人を殺した可能性が浮上した。
 紫杯連同士の関係悪化を防ぐために調査を進めてゆくうち、愛人が懇意にしていた暗殺士と会っていたのを最後に行方不明になっていた事を知る。痴情のもつれから愛人を殺した暗殺士が界螺の享受者をスケープゴートに差し出したのが真相であった。
 手打ちを望む界螺と話し合いの席を設けるエザレラだが、事件を収めるための界螺の要求はとても鐘杏には受けいれられない高飛車なものだった。しかしエザレラはそれをすんなりと受け入れようとする。
 これを機会にエザレラら旧燐誡派が、ジャバドに代表される旧鐘杏の幹部の一掃を図っているのではないかという推測のため、クルシュ達は懊悩する。
 結局、愛人の反魂を提案する形で界螺との関係を取り持ち、どうにか状況を収めた一行であったが、ガシムとハマーはその間執拗にジャハドの夜伽に突き合わされる羽目になったのだった。

 

第10話 死者の街は我を知らず 【GM:どみ】

鐘杏傘下の村、ザフールからの送金が遅れており。回収に向かった享受者達もまるで要領を得ない報告しかしていないという。
 年度末の会計監査で経理のメンバーからそんな事を聞いたクルシュ達は、現地の調査へと向かった。ガシムの提案で村に非認識の呪いが働いているのではないかという推測のもと調査を開始する一行だが……果たしてその最悪の予想は的中する。ザフールはすでに毒を撒き散らす中位邪霊ジャフガルファによって獄と化し、亡者の村と化していた。村人たちは非認識の呪いによって自分達が死んでいる事にすら気付いていなかったのだ。
 抵抗力の弱いリフラは毒によって瀕死の傷を負い、体毛が抜け落ちるという毒の呪いによってリーダーの正義の証であるアフロまでもが危機に晒される。どうにか機転によって魔具「生命」や粘丹獣などを駆使して邪霊を退けた一行は、村を侵していた邪霊を導いたのがまたも紫豹の一人と知るのだった。

  • 理系で知られる鐘杏が、今回の剣で派遣したのは愧拳闘士、刀士、獣甲闘士の3人。術者達の姿は見えず、なにかの目的で術者たちは集められていたのだという。
  • 誰一人として住むもののいなくなった村に姿を見せた謎の女性。彼女の頬には、紫の刺青があった……

 

第11話 昇れ、蒸気の楼閣 【GM:真性】

大抗争で滅びた紫杯連「燐誡」の再興を掲げ、モレクに出現した蒸気の幻鏡域と超巨大砲台〈煉獄の落陽〉を占拠し蜂起した一団が出現した。袈唇と手を組んだ旧燐誡派の天使・ヴァーリルの暴走を止めるべく、エザレラはクルシュ達を派遣して事態の収拾を図る。彼女としてはせっかく準備を進めてきた自分の計画を全てご破算にしかねない暴挙なのだ。
 時を同じくして、凌渦、界螺の享受者達もこの暴動を止めるべく幻鏡域に集まっていた。時に力を会わせ、時に反発しながらも塔を昇ってゆく享受者達。隙あらば手柄を奪い、エザレラらの立場を脅かそうとする同じ鐘杏の享受者アファーヌらの目論見も潰し、クルシュ達は激戦を乗り越え、旧燐誡派を隠れ蓑に暴動を乗っ取っていた袈唇の享受者ガノゼガルを倒し、暴動を一掃するのだった。

  • エザレラが率いるシェオール旧燐戒派が協力しなかった時点で、ヴァーリルによるこの暴動は失敗に終わっていた。この時点でのエザレラの影響力はかなりのものに達していたと推測される。

 

第12話 魔法使いの名はサラバント 【GM:どみ】

明けの明星通り『ヴェールを脱いだ女』亭で起きた享受者同士のケンカ。鐘杏所属の獣甲闘士が非礼を働いたことをきっかけに、クルシュたちは凌渦所属の旅の妖霊使い、クージョ・ジョアテロと知り合う。魔法使いサラバントの名で呼ばれる彼はかの妖霊刀士アフマドの孫であり、20年前の大乱の折にシェオールの地下で起きた大事件で上位邪霊と戦って命を落とした祖父を反魂するために旅をしているという。
 20年前、シェオールの遺跡で起きた異変を探るうち、遺跡の地下には妖霊を捕らえる謎の祭器があり、そこには今もなおアフマドを殺した上位邪霊ザリチェが獄を張っていることを知る一行。アフマドの遺品を求め、クージョと共に地下へと潜った一行は、獄卒たちとの戦いを潜り抜け邪毒の獄の邪霊律が支配する獄の辺縁部でザリチェと対峙する。
 万全であれば決して抗しきれない相手ではなかったが、既に一行の身体は疲れ果てていた。ガシムの機転でザリチェにリフラの舞を捧げ、辛うじて命を永らえた一行は地上へと戻る。
 そしてクルシュはクージョにエザレラが所持する獄への扉となる「幻鏡の剣」の存在を教えるのだった。

 

第13話 幻夢の村は彼を識らず 【GM:真性】

ザフールの一件で明らかとなった非認識の呪いによる紫杯連支配地域の獄化現象。再調査を進めるうち鐘杏傘下の一つの村がかなり以前から似た状況に陥っていることを知ったエザレラは、クルシュらにその調査を命じる。到着した村は砂に埋もれ、なんと百年も昔から朽ちていた。
 村の指導者的役割をしていた享受者、ガイエンは光帯の端にまで辿り着き、その先に地上に続く何かを見たという。百年前のある日、半死半生となって戻ってきたガイエンは2百人あまりの村人を連れて近くの山脈へ旅立ち、そのまま戻ってはこなかったのだ。
 彼らを追って山脈へと辿り着いた一行は、そこに築かれた巨大な幻鏡域と、邪霊を捕らえ黒沙をすり潰して灯される源の炎の下で幸せそうに暮らす死者達の都に辿り着く。目に見える幻と目に見えない幻。深く折り重なった迷宮の奥に、地平の深淵を覗いた男は妄想の亜獣、髑髏の魔術師に身をやつして一行を待っていた。

 

第14話 瓦礫の闘場に響く囁き 【GM:どみ】

獣甲闘士“西風”ナスリーンという凌渦との人材交流を兼ねて、闘技場で横行している対戦者への襲撃事件を追う事となった一行。
 事件の真相は闘技場のチャンピオンの邪眼刀士ラフィルに恋慕するあまり堕落した界螺の獣甲闘士ヴォーグの仕業だった。本来ならばクルシュ達が乗り出すようなレベルの事件ではなかったのだが、彼に協力していた“紫豹”の配下の暗殺組織“鋼の蜘蛛”の存在が明らかになり事態は複雑化。
 さらに追い詰められたヴォーグが謎の烙印(崇呪詠みの反動である)によってなんと従貴に変容するという異常事態が発生する。邪霊にまつわる謎の組織紫豹の目的は一体? 混迷する事態の中、徐々に袈唇に潜む闇が明らかになろうとしていた。
 凌渦は本来一時的なものだったナスリーンの派遣を延長。鐘杏の動きを牽制、監視する役目を継続させ事態に介入の余地を作り出す。エザレラにとっての正念場が始まったのだ。

 

第15話 紫杯に注がれた甘美な毒 【GM:真性】

砂と炎が焼き付ける過酷な煉獄の日々の中、鐘杏シェオール支部長のエザレラは大抗争で滅ぼされた紫杯連「燐誡」再興のため着々と準備を整えてきた。幾度かの危機を乗り越えた今、決起の時が迫り、クルシュ達は彼女を支援するか、敵対し鐘杏本部の意向を仰ぐかの選択を迫られる。
そんな中シェオールの近郊に突如獄が出現する。そこには紫杯連「鐘杏」の成立に関わった首領級邪霊、“格差の肯定者”ゾーライザの策謀があった。
 獄の出現に巻き込まれた隊商と盗賊、そして享受者達。獄そのものはクルシュらの活躍で退けられはしたものの、被害にあった彼らの中でただ一人生き残った少女アリムが、混迷する事態に風雲急を告げることとなる。

 

第16話 届く想いと届かぬ願い 【GM:しろみけ】

 若くして巨万の富を得ながら、自ら命を絶った商人アミン。その遺産をめぐって数多の愛人が争う中、アミンの秘書であったニキという女性から反魂の依頼が来た。
現在最も有力な「遺言状」を持っているリラという女性は〈袈唇〉に通じており、反魂を妨害するために享受者の一団を“獄”に派遣したという。
 依頼を受けた一行はあわてて獄に赴き、アミンの魂を確保すべくヤムリーハの代行分体の統べる獄“蛇鏡の紅”へと向かった。

 

第17話 星を見ゆるは銀の器 【GM:Riza】

 多くの黒沙使いを輩出するシュオール東方の村、ネーニキーア。黒沙帯に近く“獄”への足がかりとしても利用されているその村に謎の黒沙嵐が発生し、派遣した調査隊も帰還しないため、鐘杏シェオール支部長のエザレラはクルシュ達に第二陣として先発した享受者たちの安否確認と任務の代行を依頼する。
ネーニキーアに到着した一行は、黒沙帯の偵察によって黒沙嵐の中心に【儀式攻撃式、隕石】が行使されているのを目撃。事件の裏に幻鏡使いがいることを確信する。
さらに探査の結果、ネーニキーアからほど近い風洞に源の炎を据え、儀式を繰り返す邪眼使いのガルダたちが黒沙嵐の原因であることをつかむが、彼らのさらに裏には、袈唇の銀沙使い、ナグレフがいた。
彼は一度村に戻ったクルシュ達を村ごと隕石の標的にし、その魂を使って銀沙の“アズラエルの四肢”を作ろうと目論む。
 
 
 

第18話 蘇りし時の前に【GM:真性】

鐘杏支部を訪れた少女アリムの正体は、鐘杏指導者のトゥースとその右腕、シャーフィルの娘であった。指導者トゥース直々にその娘を遣わしたということは、旧燐誡の再興を目論むエザレラにとっては恐るべき脅威となる。
 トゥースの娘という肩書きを持つアリムの存在は鐘杏シェオール支部を大きく揺るがし、本部派と旧燐誡派(エザレラ派)の対立は対に表面化してしまう。これまでの言動、行動からエザレラ派の筆頭と目されてきたクルシュは本部派に恭順を示した炎術師のジャバド旧支部長、獣甲闘士のタイシル副支部長と対峙し、刃を向け合うまでの事態となった。
 しかしアリムが袈唇と通じ、エザレラらを処分する算段である事が発覚。ジャバドはクルシュを認め勝負を預ける。
 だがその直後、鐘杏本部は突如発生した獄の中に沈んだ。20年前、燐誡の本部鉱山都市クスンドを壊滅させた『獄堕とし』の再現だ。空に輝く二つの月は邪眼術の奥義。ジャバドとの激闘の傷も気力も癒えぬまま、クルシュ達は奔走する。

 

外伝1 大海原への冒険【GM:Riza】

海洋都市ファーユの第九王女ラナヤンガ姫に呼び出されたリフラとハマーディーンは、海の幻境域ファファール海に旅立ったまま行方不明となった船乗りシンバッドを探すべく、大海原へと乗り出す。
 ファファール海に浮かぶクード諸島を巡り、アンブロムという島の王国でシンバッドを見つけ出した二人は、彼が嵐の王ウーフーラと名乗るイフリートの宝『海渡りの靴』を探していることを知る。かのイフリートはこの島の住民に靴を戻すか、皆殺しにされるか、さもなくば島の最高の宝を差し出せと迫っていた。
 シンバッドがこの事件を解決したいと懇願したため、航海の果てに事件の真犯人である盗人を追い詰めた二人。だが、変身の秘術を駆使する盗人と同盟を結んでいたイフリートとの死闘の末に、ハマーはあえなく命を落としてしまうのだった!!

  • 「島の最高の宝」とは、王国の2人の王女の妹で、クード諸島の宝石と呼ばれる美少女のヤスミナ姫だといわれているが、ウーフーラはなぜか明確にそのことを言わなかった。
  • 事件の後、ヤスミナ姫はシンバッドを追うためにリフラの船に密航を敢行、幻鏡域の外までついていくバイタリティを見せた。
  • シンバッドは幻鏡域から出てくるとラナヤンガ姫との挨拶もそこそこにまた旅に出た。まだまだ結婚する気はないようだ。

外伝2 獄に燃えるは嫉妬の怨嗟【GM:どみにく】

ファファール海での冒険で命を落としたハマー。その身体を弔うため独りシェオールへの帰途に付いていたリフラは、その途中の渓谷回廊で一週間も砂嵐に巻き込まれ足止めを食っていた。
 避難した先の洞窟で、彼女を迎えに来たナスリーンと合流したリフラは、そこに居合わせた凌渦の享受者達から、優れた他人を妬む者の魂を好んで集める上位邪霊、“嫉妬男爵”カサディーンと、彼の治める『嫉妬の獄』の話を聞く。
 実にご都合のように出現したおあつらえ向きな獄の存在に、なんとも微妙な気分になりながら勇猛なる妖霊アディムを助けるため、二人は嫌々ながらも嫉妬の獄へと挑むのであった。

  • 砂嵐を起こしていたのはアディム本人。プライドの高い妖霊は、通常直接人間を頼ることができない。リフラを閉じ込めたのは彼としても苦肉の策であった。

 

第19話 月と狂気の奏でる葬送【GM:真性】

シェオール鐘杏支部を突如飲み込んだ邪眼術の【狂い乱れる眼】。それを合図にしたかのようにシェオールの一角は獄に沈んだ。鐘杏本部よりの刺客アリムが首領級邪霊ゾーライザとの契約をたてに、20年ぶりの獄堕としを決行したのだ。
 シェオールの市街地には獄卒が溢れ、さらに強固な非認識の呪いがそれを覆い隠す。被害は次々に拡大し、支部長エザレラ、そしてその祖母ダーリラを含む旧燐誡派は皆獄に呑まれた。20年前の大抗争でこの獄堕としの首謀者となった界螺の幻鏡術師ミア――これまでもその協力は疑われていたが、それも事実と判る。
 シェオール壊滅の危機すら孕む火急の事態にジャバドら旧幹部と和解したクルシュらは、界螺、凌渦の各支部長とも共同戦線を発足、エザレラ達を救い出すために獄へと挑む。
 かくして瓦礫の街を舞台に、最後の戦いが幕を開けた。

 

第20話 愛と正義に破れる鋼鉄【GM:真性】

支部を飲み込んだ獄で上位邪霊アエシュマと共にアリムを倒し、ダーリラと共にザレラの魂を救い出したクルシュ達。崩壊した鐘杏を建て直すべく、界螺、鐘杏、凌渦の3紫杯連間で会合が開かれる。結果、シェオールから姿を消した袈唇の支配地域を治めるため、燐誡の復活が決議された。
 燐誡の支部長バジ・フォルバブーの囚われた獄、闇に潜った袈唇勢力の行方、アリムの黒幕である鐘杏の長トゥースの討伐、事態の遠因となった界螺の幻鏡術師ミアの捜索。全ての目的はひとつに交わり、言論都市ウァスを指し示す。
 書庫の幻鏡域のその遥か奥に隠された、“隔意の肯定者”ゾーライザの『書庫の獄』。そこはまたバジを始め燐誡幹部の魂が囚われた場所でもある。現在の鐘杏成立の経緯となった邪霊との盟約を清算するため、クルシュ達は再びウァスへと飛んだ。
 獄を潜り抜け、最奥部に待っていたのはトゥースがゾーライザとザアロロヌアから借り受けた代行分体。鐘杏を揺るがす大決戦の末、トゥースは倒れバジの魂も反魂に成功する。燐誡は見事復興を約束され、シェオールは袈唇を排除して再び四紫杯連の支配体制を取り戻したのだった。
 エザレラや各支部長の労いを受けつつも、クルシュはそれらどの勢力にも縛られない新たなる紫杯連、『逢露』の設立を望んだのだった。
 ――これにて燐誡編、堂々の完結。

 

第21話 邪霊と妖霊の舞い踊る夜【GM:どみにく】

大騒動の末に旗揚げとなった紫杯連『逢露』にやってきた天使の娘――彼女はかつてクルシュらと共に死毒の獄に挑んだ妖霊使い(サラバント)、クージョ・ジョアテロの婚約者だった。
 ポー・ナーリフと名乗った彼女は、ジョアテロが旅の途中で立ち寄った村を脅かす盗賊を討伐するために単身そのアジトに乗り込み、そのまま戻らないことを伝える。
 ポーを伴って村に到着した一行は、盗賊たちが見た事もない姿の魔物を従える魔法の指輪を持っていることを知る。盗賊たちのアジトに潜入し、無事ジョアテロと人質になっていた村の女たちを救出したものの、盗賊の首領に指輪を渡していた怪人物の正体はなんと姿を変えた妖霊で、その主人はポーだった。ザリチェの死毒の獄から拾い上げたアフマドの魂と、ラスマーンの遺産『覇王のランプ』をもってジョアテロを服従させ、妖霊を従える王とならんとする彼女と、クルシュらの激戦が始まる。

 

第22話 紫豹のその名に誓う復讐【GM:どみにく】

ポー・ナーリフを倒したクルシュらは燐誡のダーリラに呼び出され、紫豹の正体が多くの商人たちの集団であることと、とその勢力がジャハンナムの各地に散っていることを知らされる。その中にはガシムの兄、ナーデルの名もあった。
 さて。手に余る事実を聞かされ、紫豹への対応を決めあぐねていた『逢露』の面々の元に、反魂されたアフマドとその妖霊シルニーヤから、ラスマーンの実子である半妖霊の双子を保護して欲しいとの申し出がある。
 遥か南東の地にある花園の遺跡に眠るという双子を求め、旅に出た一行を待ち受けていたのは、遺跡に刻まれた紫豹の名前と、双子のうちの片方が既に行方を晦ましている、という事実だった。
 永い眠りから目を覚ましたラスマーンの姫アムリタとともに、双子の兄ソラリスを探して旅立つ一行。様々な謎を残したままジャハンナムを巡る旅が始まるのだ。
 ……かくして紫豹編のオチも付かぬまま、皇女編/地上探索編のはじまりはじまり。まず目指すは界螺の本拠地、海洋都市ファーユ。

 

第23話 花嫁衣装に接ぎ剥ぎの街【GM:どみにく】

意気揚々とファーユへ向かったクルシュ達だが、最短経路に障害があることもあり、南へ大回りしてまずは獣甲都市レモーフへと空を進むことになった。その途上でアディムがハマーをとり落としたことに気がつき、あわてて戻って探したところ、渓谷の街ナレダの近辺できらびやかな姿の少女4人組が何かに追われている場面に出くわす。
 彼女らはナレダの娼婦であり、追っていたのはナレダの鍾杏の享受者だった。少女達を保護する過程で行き違いから黒沙使いを殺してしまったため、一行はナレダに向かい事情を説明をする。するとこの街で娼婦を狙った連続バラバラ殺人事件が起こっており、少女たちはそれに怯えて脱走したことがわかり、行き掛かり上も手伝ってクルシュ達は事件解決のための依頼を彼女たちから受けることになる。
 調べを進めていくと、線上にこの街の幹部享受者の暗殺梟使い、ダザーハと、上位邪霊ドゥルジの影が見え隠れする。そして持ち去らされた娼婦たちの体で作られた花嫁人形を探し当てたとき、それは確信に変わった。ナレダはフォゲアウムとドゥルジの2体の上位邪霊が力を競い合うための邪渉領だったのだ!

 

第24話 女王の躯に甘い口付け【GM:どみにく】

邪渉領の崩壊と共に住む場所を失った渓谷の街ナレダの人々を一度シェオールに送り届けた一行は、再びファーユを目指して獣甲都市レモーフへと向かう。折りしも獣甲の新作展示会が行われており賑わう街であったが、クルシュはそれらのスポンサーに紫豹のメンバーの名前を見つける。
 一方、新作獣甲の中でもひときわ目玉であった“獣甲の王”凱鳳・“獣甲の女王”麟骸をめぐって、獣甲技師組合、凌渦の支部、そして種族解放同盟の革命を目論む一団を巻き込んだ騒動が発生しており、一行は凌渦の魂装士アル、炎術師ラシーダの依頼を通して、この一件に一枚噛むことになる。
 凌渦の支部長率いるレモーフの幹部達は皆獣人や銀糸の民であり、この暴動は彼らの指導による計画的なものであった。
 蜂起した革命軍の圧倒的な物量と不完全ながら最強獣甲を纏った獣甲闘士グラニテに苦戦を強いられるものの、辛うじて勝利を収める一行。しかし事件は終息したものの、紫豹が如何なる意図で獣甲を求めていたのかは判らずじまいであった。

 

第25話 暗き廃都に降る白雪【GM:どみにく】

 ファーユへ向かう道中、クルシュの元に一通の鷹便が届く。差出人はエザレラ、ジャバドらの連名であり、内容はシェオールの新四大紫杯連が袈唇を含む過去の資産を調査していたところ、20年前の大戦で行方不明になった頽廃樹についての記録が発見されたというものだった。大抗争時代以前は数多くの中小の紫杯連が存在しており、彼らの持っていた頽廃樹は統合の過程で行方不明になっていたものがあるというのだ。
 逢露の所帯も拡大した現在、いつまでも享受者の獲得をヘッドハントだけに頼ってもいられない。もし望むなら頽廃樹を分配しようというエザレラの申し出に乗ったクルシュは、記録の中にある頽廃樹の一本が現在地から程近い白砂の降る渓谷リジャーフにあった紫杯連『穏華(いんが)』に残されていることを知り、寄り道を決める。
 【儀式攻撃式、隕石】による大戦の傷跡を深々と残し、既に指導者を失い、滅びるに任せて暮らしている寂れた村々の人々。かつての幹部達も皆希望を失い毎日を過ごすなか、そんな中指導者の娘のネーユも「捜索する分にはかまわない」と素っ気無い態度で応ずるが、その裏には不可解な言動が見え隠れする。
 早速捜索を行う一行であったが、そこにはかつての〈穏華〉リーダーへの倒錯した愛がつむぎ出した物語があったのだった。

 

第26話 大海の辺に伏せる策謀【GM:どみにく】

 紆余曲折を経てようやっと海洋都市ファーユに到着した一行は、ファーユの〈界螺〉本部へ出向き、ジャバドの手紙を使って情報提供面での協力を取り付け、アムリタの兄ソラリスの行方を追う。
 彼らが“海”の幻鏡域ファファール海に入ったことを掴んだ一行は船を借りて大海原はクード諸島へと乗り出すが、激しい波に揉まれたガシムは熱を出し戦線を離脱(PLも)。クード諸島を統べる妖霊“嵐の王”ウーフーラはすでにソラリスを妖霊の王と認めその支配下側についており、巨魔の本性を露にして一行の行く手に立ち塞がる。 さらに、ソラリスたちがウーフーラの宮殿からかなりの量の魔具を持ち出していることも判明したが、その意図・目的については不明瞭なまま、調査を続けることになる。
 さらなる手がかりを求めてクード諸島の人間の王国アンブロムへ向かうが、そこでは〈界螺〉に潜り込んで一行に協力していた〈袈唇〉の享受者、《楔》のゾーイとヒヒカが待ち伏せをしていたのであった。 
 
 

外伝3 凶兆を告げる大烏【GM:Riza】

 『伝えてもらった(紫豹の)件について話あり、戻られたし』というガシムの父親からガシム宛に手紙が来たが、紫杯連の事務的な都合もありクルシュ(&アムリタ)とナスリーンはシェオールに一度戻ることになり、ガシム・リフラ・アディムの2人+1体にハマーを加えた一行で、一足先にウァスに向かうことにした。その途上の町で、3人は雑芸術団〈英雄の集う星〉のリーダー、ニケから行方不明になった半妖霊の娘2人を捜索・保護してほしいという依頼を受ける。
 行方不明になったアールケーの町を訪れた一行だったが、町中に人間ほどもあるカラスがはびこり、家畜がまったくいないという異様な光景に一同は“非認識の呪い”を疑う。さらに種族解放運動団体の銀糸の民や獣人がさらわれた話や、あまつさえ一行に応対したリスの獣人まで烏に攫われる現場を目撃するに到り、一行は烏が群がる屋敷に住む鷲の獣人、ガンザーニャに疑いの眼を向ける。
   
  

銀沙編第1話 銀沙の海に幻鏡の姫【GM:Riza】

 ファーユの第九王女ナラヤンガ姫から呼び出された一行は、またもや冒険の途中で居なくなったシンバッドを「父であるファーユ王に内密に、できるだけ早く」救出してほしいというを依頼をされる。クルシュが聞き込みをしたところ、数日前にアンブロムの第二王女ヤスミナと口論をしていることが判明。どうやら彼女が雇うであろう享受者一行より早く探してほしい、という依頼だと踏んだ一行は手早く情報収集を済ませてシンバッドが向かった“銀でできた砂丘にある銀の宮殿”があるという場所へ向かったのだった。
 そこで待ち受けていたのは「銀沙の疑獄」と呼ばれる、銀沙の生成を行うために作られた獄であった。
そして、本来希少である銀沙が大規模に生成され、獄から貸し出された魂によって維持されている様を見た一行の口を封じんと、獄を預かる《銀沙術》の使い手が一行を襲ってくる。

  • ナラヤンガ姫はこの後シンバッドと駆け落ちを敢行。念願の冒険の旅に出ることになった

   

第27話 賭博の街に響く断末魔【GM:どみにく】

ナーデルの件について話したい事がある、至急ウァスまで戻られたし――アーダム商会からの手紙を受け取り、ガシムは実家の長兄イマードを訪ねる。なんとナーデルからの酒を開けたガシムの父は昏睡状態に陥っていた。
 種々の調査の末ナーデルが袈唇の本拠とも呼ばれる賭博都市カリュオンにて闇の商会《征服者(カハール)》の幹部に登り詰め、紫豹の一員であることを確認した一行は、《征服者》の開く危険な闇の賭博会に潜入する。首領級邪霊“百万腕”メレイヨキの邪霊律を預かる《征服者》主催のモンラッドを始め、ジャハンナムの縮図と称して、黒服の獄卒を使役し金の亡者となって人の苦しみを笑う商人達に憤りを覚えながら、ガシムたちは見事勝ち上がり、ナーデルに引導を渡す。
 モンラッドはクルシュの問い詰めにその崇呪詠みの本性を顕し、獄の支配者フォゲアウムを呼び出した。邪霊律を打ち払い《征服者》の賭博会を破壊した一行は、紫豹が『魔獣画伯』なる人物の保護のため莫大な支援をしていたことを知るのだった。
 
 
 

第28話 魔獣画伯と青空への塔【GM:どみにく】

 縞模様の街サルメシアムは、混在地域にあったこれといって特色のない小都市であったが、モンラッドの施した非認識の呪いが解けたことによって、ラスマーンの旗印を掲げ、紫杯連を拒絶する一大都市群としての姿をあらわにした。
 突如現れた巨大都市に対して凌渦はアブー・ターリブを中心とした一団を、燐誡はエザレラを中心としたチームを派遣するなど、各紫杯連が調査に乗り出した。
 逢露の面々もカリュオンから流れていた巨大資金の流れ先としてサルメシアムの存在を察知し、その商業価値を測りたいアーダム商会と、ソラリスの行方を追いたいアムリタの依頼によって、サルメシアムに向かうことを決めた。
 サルメシアムでは紫杯連を拒絶する風潮が市民の間にも強く、さらに地上へいたる塔を築くべく、空高くまで続く塔が建造されていた。その意図を知るべく、そしてソラリスの居場所を知るべく、一行は街の支配者であるアーマーンに会うことを決めるが、享受者、さらに紫杯連所属というだけで排斥される街では、強行突入以外に術はなかった。
 

  • ナスリーンが「アブーが動く大事だと(移籍していない)自分が動きづらい」と同行に難色を示したため、炎術ソードダンサーのマリヘフが同道することになる。

 
 

第29話 牙と剣の交差する戦場【GM:どみにく】

獣人の集う街リンダールは、3年にわたるソラリス軍との対峙の末、疲弊しきっていた。サルメシアムの太守に仕えていた孔雀の暗殺士シャールディに助力を求められた一行は、ナスリーンと合流したのちにリンダールの地下通路から入城、王女である“銀糸雀”ヒミカに謁見し、天才軍師アレスとソラリス教団連合軍と対決することになる。
 アレスの指揮する数万を数える連合軍はリンダールを包囲し、ついに決戦の火蓋は切って落とされた。圧倒的な兵力差の前に成すすべなく押し潰されるかに見えたリンダールだが、それをガシムの【吹き上がり滅ぼす炎】が、ナスリーンの【奥義・殲滅】が、リフラの黄金の剣閃が吹き飛ばす。
 クルシュの【長期幻乗式・移送】で神出鬼没に現れる享受者によって、天才軍師の率いる軍隊は屍の山を築くのみであった。

 

第30話 詩人の迷宮と千獣の王【GM:どみにく】

リンダールに束の間の安息が訪れ、伝説の千獣王が現れるといわれる『大密林の幻境域』もヒミカとクルシュの尽力によって固定化された。しかしソラリス側が提示した和睦の条件は「ソラリス教団の手による幻鏡の破壊」と、到底リンダール側がのめるものではなかった。
 しかも幻鏡から千獣王が現れる気配もなく、極秘裏の調査でフィサールの迷宮が存在することを知った“銀糸雀”ヒミカは、逢露の面々に一緒に幻鏡域に赴き、調査を行うための護衛をしてほしいと依頼する。
 フィサールの迷宮が崩壊する時、地上へ至る鍵となるフィサールの四行詞が現れるとされている、アレスの狙いはおそらくその四行詞なのだと見当をつけた一行はヒミカと共に一路幻境域に突入した。
 しかし、幻鏡域の番人は何者かに破壊され、不気味な享受者たちの影が見え隠れする。彼等の正体は鐘杏の妖霊使いサーリサーウの率いる一団だった。トゥースの腹心だった彼等は、主を失墜させた逢露に復讐を誓っていたのだ。奇しくもオネイロスを奪い合う形となった激戦の最中、ヒミカは一人オネイロスの眠る『胎内の間』で千獣王の復活を願うのだが……

  • 先の戦いで獣甲が破損したナスリーンは獣甲の補修ができず戦線離脱、マリヘフが代役を務めることになったが、さすがに3倍差のランク差に抗うことはできず、大火力の前に灰になる。

 

外伝4 カンテラに灯すは恋の炎(原題:西風は恋の逆風!?)【GM:Riza】

@瓦礫の都シェオール &ロードローラーと6色の〈源の炎〉

 

第32話 死せる千獣活けるは伝説

伝説の千獣王の復活にリンダールは歓喜に満ちた。王の帰還と共に意気を取り戻した獣人たちはソラリス連合軍を撃破し、軍師アレスを欠いた連合軍は城塞都市ダハーカまで撤退する。
 しかし、戦勝に湧き返る獣の王国で、千獣王復活の代償としてフィサールの魔物・オネイロスに取り込まれたヒミカの身を案じる者たちがいた。中でも御庭番としてヒミカに仕えたシャールディ、クシュリカ兄弟の悲しみは特に深かった。
 そして、草食獣人を束ねる部族長、山羊のメロエは千獣王がオネイロスであることが露呈すれば王国の民にも大きな動揺が起こるであろうことを指摘し、ガシムを通じて千獣王の暗殺を依頼する。
 『王国が危機に陥った時、そこから伝説の王が現れる』という伝説を守る為、フィサールの四行詞を手に入れるため、そしてヒミカを救うため。千獣王に挑むクルシュ達。
 そんな混乱の最中、逢露に接触を試みるソラリスを妨害せんと、袈唇の<楔>が再び姿を見せるのだった。

 

第33話 黒き大河の遺跡の死闘【GM:どみにく】

紫杯連の侵攻が続く最中、ソラリスはクルシュを名指しし、逢露の保有するラスマーンの遺産を全て献上するようにと高飛車な書面を送りつける。取引の当日、そこに姿を見せたのはソラリスと彼を信奉する6人の享受者だった。
 ソラリスがその中の一人、ノルと名乗る中年の邪眼術師に誑かされていることを悟った一行は交渉を決裂、ソラリスと袂を分かった“風より疾き”ラルカイハの協力を得て、ソラリスの真の目的を知る。
 地上に行くため月に行き、そこを支配する天使ゼラキエルを殺す――そのための力を蓄えるため、ソラリスは多くの魂を取り込み、さらにラスマーンの遺産を我が物としていたのだ。
 涙を流し、悲痛な声で兄を止めてくれと叫ぶアムリタ。
 ソラリスの行方を追って月に繋がるという天使の遺跡『時空回廊』の場所を知ったクルシュらは、エザレラの先導で黒沙帯の遥か南西の果て、黒沙の大河の尽きる大地へと赴く。そこに待っていたのはソラリスの過去を繋ぐ紫豹の記憶と、ソラリスに忠誠を誓う猛者“斬蠍十閃”のギニグ、“暴風”シルジャ、“裏霧の”タムリフたちであった。

 

第34話 月まで届け覇王の道よ【GM:どみにく】

煉獄の果て、天蓋を割らんばかりに突き立つ黒沙の竜巻の中、『時空回廊』の発動と共に月へと繋がる扉が開く。ラスマーン王を僭称し月へ赴くため多くの命を奪うソラリスに、紫杯連《逢露》のクルシュ、リフラ、ガシム、ナスリーン、妖霊アディム(あとついでにハマー)は戦いを挑む。
 ゼラキエルの支配する月の天使律【天地無用】による無重力、そして際限なく魂の滾り(闘技チット)を食らうソラリスの力に苦戦を強いられる享受者たち。
 そして、激戦の中ソラリスが大きく傷ついた時、その背後に存在していた陰謀もまたも明らかとなる。邪眼術師ノルの正体は、かつてシェオールの貴族院に属していた貴族達のゴーストの集合体だった。アーマーンの妹の黒沙術師ニミールを誑かし、傷ついたソラリスを支配して同化、黒沙の巨大な蛇の姿――“蛇身骸”を起動するノル。全長600mにも及ぶ巨体と、百の邪眼を持つ巨大な黒蛇の姿をとった彼は高らかに宣言する。
『我こそは邪霊ノル。人より出でし二十番目の首領級邪霊なり』と。
 余りにも強大なその力を前に、しかし享受者たちは屈しない。傷つき、斃れ、限界を超えた疲労に苛まれつつも、ついにリフラの振るった最後の一刀がノルの額を貫く。断末魔と共にノルが振り仰いだ先には、静かにサングラスを外し、その両眼を露にしたクルシュの姿があった。
 長い戦いは終わり、そして皆は再び瓦礫の街へと戻る。
 共に戦った仲間達と喜びを分かち合い、そしてまたひとつ、この煉獄に正義と愛を貫いたことを誇るために。
 ――これにて第2部、皇女編・完。

 

外伝5 刃と骸のひしめく魔境 −リフラの獄潰し編−

鉄の匂いと、耳を濡らす暖かさににリフラは眼を覚ました。
 途端、頬に走る激痛。気付けば彼女は荒涼とした大地に一人、取り残されていた。地面にはびっしりと刃が生え揃い、自分が血だまりの中に伏していたことを知る。
 左手は肩の付け根からばっさりと切り落とされ、傷口からは今も血が溢れている。金糸雀も呼びかけには応えなかった。混乱と疲労に朦朧とする頭で記憶をたどるも、なぜ自分がこんな場所にいるのか思い出せない。そんな時、刃の丘を踏み越えてくる足音があった。
 リフラと同じく両腕のない虎の獣人は、顔をしかめて問う。
「おい、ここがどこだか知ってるか? ついでに俺が誰だか教えてくれ!!」
 驚いたことに、彼の顔は最強の名を冠するかのアリー・ターリブに瓜二つだった――。

 

第35話 業火を放ち、業火に抱かれ【GM:どみにく】

黒河の街ゼガ。非常によく燃え、高価な金額で取引される『黒い水』を算出する砂漠の街だ。数ヶ月前の騒動により壊滅状態となったためこれ以上の『黒い水』の産出が望めなくなったゼガでは、いま界螺、鐘杏、燐誡、凌渦の4つの紫杯連が残された『黒い水』を巡って利権を争っていた。部下からの報告を受けた逢露幹部のガシムは、この争いに5番目の紫杯連として名乗りを上げることを決定する。
 所用で手の離せないクルシュと、放浪中のナスリーンの代わりに、マリヘフを加えた4人はゼガに向かう。
 現地ではすでに各紫杯連の工作員たちが激しい抗争を開始していた。窮地に追い込まれていた鐘杏を助け、凌渦とも協力体制を築いた逢露は、燐誡の腕利き享受者と対立する。彼等はバジの片腕でもあった幹部で、20年前の大抗争で死亡し獄に捕らわれていた者達だった。バジにより反魂されたという彼等は、その対立の理由も話さぬまま逢露の享受者たちに刃を向ける。
 そして――駆けつけたクルシュの前で、大抗争時代の悪魔、巨大獣甲“殺戮の業炎”が起動する。今再び、ジャハンナムに争乱の予兆が訪れていた。

 

第36話 死に狂うは刀士の本懐【GM:どみにく】

“銀糸雀”ヒミカ姫の紹介で勢力混在地域のシュメルカより訪れた、王子ムシュネーロ。現在彼の父王が治める王国では、“刻死流”と“双牙流”のふたつの刀術流派が互いの正統性を争って抗争を繰り広げていた。血で血を洗う争いに、まったくの無関心を決め込む父王に痺れを切らし、ムシュネーロはリンダールの包囲戦を解決した逢露に助けを求めに来たのだ。
 シュメルカに赴き、その抗争に巻き込まれることとなった逢露の一行。だが、その裏では“魔剣の大公”ノトルファリとその反存在である冥極刀アル=マヒクを狙う“朽ち縄の女王”ヤムリーハの画策があった。混迷する事態の中、“双牙流”の祖、老剣士クガンは“刻死流”の師範ガーベラの自宅にて死体で発見され、暴走したふたつの流派は街中で激突する。
 首領級邪霊の影と、妄念に執り憑かれた隻腕の刀士。そして再び幕は開く。
 第3部、首領級邪霊激闘編、開幕。

 

銀沙編第2話 風が運ぶは偽りの幸せ【GM:Riza】

  

第37話 紫露に逢うが少女の宿命

 ここ一年足らずでの急速な勢力拡大によって、他四大紫杯連との軋轢が予想され、瓦礫の街シェオールでの活動に支障をきたす恐れがあるとして、あらたに本部を設立しシェオールには新支部を構えることになった紫杯連〈逢露〉。
 本部としては〈燐誡〉に接収されていた黄金の幻鏡域とオアシスが選定され、めでたく黄金都市アルゾァハブの建築が始まる。同時に統率者クルシュの元、新規人員獲得と準幹部昇格試験が開催された。様々な思惑を持ちながら集まった試験参加者は102人。首領級邪霊アルゴルの従貴コンビ、ラエルとニミフェルの襲撃や、氷色の幻鏡使いサーネリアとの腕試しの結果、幹部昇格の予定だったマリヘフが急遽試験参加者に回るなどいくつかのハプニングがあったものの、リフラ、ガシム、クルシュらの提示する難問難題を次々と潜り抜け、誕生したのは5人の新幹部であった。

 

第38話 頭文字座の栄光の日

 座空織りの職人が工房を構える伝統の街パルシア。以前、リフラやクルシュの座空を調整した座空職人ノーラの里帰りにささいなきっかけで同行した一行は、暁星や炎で飾り立てた改造座空でパルシアの夜の街を飛び回る“暴座族”の行状を目にする。
 伝統的な座空職人のあり方に不満を覚え、因習からの自由を叫び暴力と破壊を肯定する暴座族のリーダーは、界螺を放逐された享受者の成れの果てであった。彼等の暴走の裏側に座空の秘伝である垂直落下の幻鏡域とそこで産出される『空を飛ぶ糸』の独占を狙う鐘杏の意図を察知したクルシュらは、ノーラを攫った暴座族を追い幻境域へと向かう。幻鏡の中に住む凶悪な魔物を操る暴座族らを叩きのめした翌日、クルシュの前には感服の瞳で彼に心酔する若者たちの姿があった。

 

第39話 闇に潜むは真なる黄金

 ラスマーンの後継者ソラリス・アムリタを巡る騒動と、アルゴルの従貴を討たれた事で、干渉派諸侯は紫杯連〈逢露〉を問題視し始めていた。次々と襲来する刺客を前に、リフラの元に一通の書簡が届く。紫豹の名を使って送り届けられたのは、傍観派諸侯の百万腕の賭博王メレイヨキからの招待状だった。
 以前に手に入れたフィサールの四行詩に従い、賭博都市カリュオンへと向かった一行は、メレイヨキと面会する。会談の席でメレイヨキは邪霊の王イブリスにクルシュ達を会わせたいと切り出した。クルシュがその気であるなら干渉派諸侯へ妨害工作を行い、それまでの時を稼ごうとも。
 首領級邪霊が語る『純然たる好意』に様々な疑念を抱きながらも、勝ち目の絶無な賭けはせず、賭博の出目は決して裏切らぬというメレイヨキの性質を見抜いたクルシュらは熟慮の上それを承諾した。メレイヨキはイブリスの居城へ繋がるというオアシスの廃墟バスッサの幻鏡域、〈ラトイーン〉の場所を教える。
 〈ラトイーン〉の秘境たるジグラットを昇り終えたその時、人は首領級邪霊の席に就くとも、イブリスに出会い望む願いを叶えられるとも言われる。
 かくして賽は投げられ、物語は流転する。ふたつに分かたれた四行詩の結末やいかに。

 

第40話 頽廃の果実酒に誓う言葉

 メレイヨキとの会談に前後すること二週間。瓦礫の街シェオールでは王の命により60年振りとなる享受者たちによる天覧武術会〈ザクム杯〉が開催されていた。本来形式的なものでしかなかった大会は、〈凌渦〉のアブー・ターリブが執行部の“西風”ナスリーンを伴って出場すると申し出たことで一変する。五大紫杯連がそれぞれ腕利きの享受者を派遣して繰り広げられた〈ザクム杯〉は過去稀に見る激戦となった。
 アブーに成り代わりこっそりと出場していた〈凌渦〉統率者アリー・ターリブや、〈界螺〉アルブム・スイーンの愛弟子サラ。並み居る強豪を押しのけて勝利を収めたのは、正体を隠して出場していたリフラであった。
 少女の健闘をたたえ惜しみなく注がれる賞賛は、荒み汚れた煉獄の地にひとときの交流と楽しげな日々を刻んだのであった。あるいは、それこそがシェオール最後の王となった少年の願いだったのかもしれない。

 

第41話 私設闘技場の魔物

中堅の享受者でありながら賭博で多額の借金を抱え、ついに失踪した〈逢露〉所属の妖霊使いニザール。クルシュらは幹部の責任として部下の始末をつける事となった。調査に乗り出したクルシュたちは、ニザールがカリュオンの賭博中毒に犯され、堕落の果てにかつての仲間たちを殺していたことを突き止める。
 ニザール達は遺跡や幻境域から魔物を狩り集め、賭け闘技場に放って生計を立てている享受者だった。ニザールが殺した仲間から奪った魔物を連れ、シェオールの私設闘技場で一発当てようとしていたことを知ったクルシュは、闘技場を運営する〈袈唇〉の幹部と合議の上、闘技奴隷として闘技場に出場することを申し出る。
 しかし、闘技場に現れたニザールが魔物トキの封印を解き放つや否や、トキはニザールを乗っ取り、フィサールの呪いによって生まれ得た恐るべき牙を剥いたのだった!

 

第42話 天に響く星闘士の凱歌

鉱山都市クスンドで五大紫杯連合同の大反魂作戦が開始されていたその頃、黄金都市アルゾァハブを訪れていた者たちがいた。紫杯連〈隠華〉を率いるアルザーンは、師であるアキリナの反魂に赴き、そこでアキリナの魂が何者かに奪われていたことを告げる。
 時を同じくして、アルゾァハブを訪れる星蠍宮(スコルピオ)の星闘士(スタイン)たち。最高位の愧拳闘士である彼等は、同志だったはずのアルザーンと紫杯連〈逢露〉を邪霊に組するものとの弾劾して拳を向ける。
 誤解を解くために星蠍宮に向かったアルザーンとクルシュらは、そこで星闘士たちが何者かに操られ、次々と立ち向かってくる様を目の当たりにする。その影に見え隠れする邪霊の影を探るクルシュの前に、蘇ったアキリナが姿を現した。
 邪霊の手先であるという〈輪廻之轍〉なる集団に反魂されたというアキリナは、躊躇いなく一行を滅殺せんと戦いを挑む。かつてアリー・ターリブに並び称された最強の愧拳闘士との戦いが始まった。

銀沙編第3話

 

第43話 書架の獄に潜む真実

メレイヨキとの接触以来散在するいくつもの謎の手がかりを得るため、クルシュは言論都市ウァスに赴き、〈鐘杏〉の許可を得て〈書庫〉の幻鏡域の奥にある書庫の迷宮に向かうこととなる。迷宮に住まう銀糸の民にしてオネイロス、司書シシトに会った一行は、彼女の持つ魔書の試練に挑み禁断の知識を探る。〈輪廻之轍〉、イブリスの目論み、崇呪十九紋の秘密、首領級邪霊への対抗手段、〈太陽〉の世界意志の雫。いくつもの謎がひとつずつ明らかになっていった。
 イブリスの行なう煉獄実験への勝利条件として、『邪霊の王の真名を知ること』というを得た一行だが、その答えのために、妖霊使いであるハマーはアディムを失うことを承知でクルシュに答えを告げてしまう。
 失意の底に沈むハマー。しかしクルシュはそこでなお、希望を捨てることはなかった。ふたつの選択肢のどちらも選ぶことなく、皆への想いを口にする。そしてその想いは間違いなく皆に伝わった。
 単身、風術の時間跳躍の試練に挑んだマリヘフは、見事リュキギイスを倒し、ハマーはアディムとの再契約に成功する。絶望を乗り越え再び前に進む力を得た一行の前に、蛇王ザッハークを奉ずる〈輪廻之轍〉の魔の手が迫っていた。

 

第44話 南の国の七人の王子

人の身体を脱ぎ捨て、ラウに支配されない新たな力を得る、という邪霊信仰の意味を探るため、かつて人の身でありながら首領級邪霊にならんとしたソラリスを訪ね、シェオールを訪れたリフラとマリヘフ。しかしそこではソラリスの妹アムリタ、7つの国の七つの王子が求婚するという騒ぎになっていた。
 成り行き上、アムリタの婚儀を阻止することになったリフラは、個性豊かな王子たちを一人一人、撃退説得してゆく。事件の黒幕であった象牙の国に使える幻鏡の魔術師ガネーシャを倒し、無事アムリタを護った二人は、ラスマーンの遺児たちから感謝を得るのであった。

 

第45話 黄金都市に迫る凶兆

言論都市ウァスで〈大峡谷図書館〉の獄を後にし、アルゾァハブに戻る途中のクルシュ達は、野営の途中不意の訪問を受ける。1人は〈凌渦〉統率者、アリー・ターリブ。もう1人は〈袈唇〉首魁の一人、蜘蛛の昆虫人の“山の翁”であった。
 現在、地獄都市ラウに巣食う邪霊信仰教団〈輪廻之轍〉とその裏に潜む邪霊ザッハークを殲滅するために五大紫杯連が合同で人員を供出し、儀式魔術【儀式攻撃式・隕石】を用いてラウを獄ごと崩壊させるという作戦が進められており、その代表にクルシュを指名するという動きがあるという。しかしアリーらは、邪霊と獄、そして崇呪十九紋に依存する界螺、鐘杏、凌渦保守派のあり方に反発を覚え、クルシュらが掴んでいる煉獄の真実を尋ねに来たのであった。
 煉獄脱出の鍵となる事実を知ったアリーは、かつて凌渦に所属していた天才神語術師サフィーア・ララ・ジャザイリーの名を告げ、おそらく彼女がイブリスの真名を知ったことがラウを埋没させた原因であると伝える。その魂は今もなおラウに張られたザッハークの〈毒蛇の獄〉に囚われているというのだ。
 アリーと“山の翁”との協力を得た一行は、アルゾァハブへと帰還する。しかし、そこには既に〈輪廻之轍〉の秘儀参入者となったかつてのザクム杯チャンピオン、ラフィルが刺客として潜入していた。人蛇へと生まれ変わった彼女は、ザッハークの力である黄金の矛を冥極刀に宿し、クルシュ達を急襲するのだった。

 

第46話 幻の浅海に赤い影

 

第47話 砂に埋もれた信仰の都

どうにか〈輪廻之轍〉の刺客を退けたクルシュらは、シェオール支部にアルゴルの雷が炸裂し、支部長アズラッドが大虐殺を引き起こして消えたという大惨事を耳にしながら、五大紫杯連のラウ侵攻に先立って埋没都市ラウへの潜入を決意する。サーネリアを伴ってラウ教徒たちが年に一度行う大巡礼に紛れ込み、埋没したラウへと辿り着いた一行は、かつての信仰都市の変貌を目の当たりにする。
 神殿の幻鏡域ごと地に沈んだ街の中は、〈輪廻之轍〉教団とその指導者である天使イシェルの名の下、歪んだラウ信仰に溢れていた。非認識の呪いと邪霊の跋扈によって、信者たちは信仰の中に死んでゆく。
 イシェルとの接触に成功した一行は、そこで彼女が煉獄に再びラウとの繋がりを求めていることを知る。交渉の末利害の一致を見た一行は、教団の真の支配者にして、魂と蛇を己が物とする大司教ゴルダを討伐することを了承する。
 魂装協会跡地から〈輪廻之轍〉本部へと潜入した一行だが、そこにはザッハークよりいかなる蛇すらも己が支配下とする邪霊律「獄王」を得たゴルダが待ち構えていた。〈毒蛇の獄〉への門を前に、無数の蛇身体を従えたゴルダとの激戦が始まる。

 

第48話 絶望の獄に毒蛇が這う・前編

ついに〈毒蛇の獄〉へ突入したクルシュたち紫杯連〈逢露〉を待ち受けていたのは、無数の蛇があらゆる邪霊の模倣を行うという、邪霊律に満ちた地であった。筆頭従貴や代行分体を模した蛇が、ラウの埋没以来の20年の間にわたって、巡礼に訪れた信徒たちを殺し、その魂を吸い上げてザッハークに献上していたのである。
 ザッハークはこの力によってファラクの支配を脱し、崇呪十九紋の変容を予言したフィサールの四行詩を成就させて、己を二十柱目の首領級邪霊へと高めようとしていたのだ。また、サーネリアが“さかさまのフィサール”と呼ばれる存在で、〈輪廻之轍〉によって蘇生させられたかつてのラウの幻鏡工房の長であったことも明らかになる。しかし懸命の探索の中でも、サファイーアの魂を発見することはできなかった。それどころか獄に溢れた邪霊の要素を介して一行には首領級邪霊が次々と干渉を試み、とうとうクルシュはゼーハーンにアル=マヒクを奪われてしまう。
 途方にくれるクルシュ達の前に、邪霊に反抗し世界の真実を伝えるという幻想の魔物、獄界の賢者ヴァーシグが姿を現す。彼と取引したクルシュ達は、3つの質問を許された。まずはザッハークの居場所を、と問うたその時、ヴァーシグは哄笑と共にサーネリアを指さす。
 ザッハークは彼女の胎の中に、人と蛇の子として宿っていたのである!

 

第49話 絶望の獄に毒蛇が這う・後編

ザッハークの目論見は二つあった。ひとつは、ラウに集めた魂を使って、首領級邪霊の力を取り込んだ強力な獄を作り上げること。もう一つは、〈輪廻之轍〉の反魂を用いて人を蛇の身体に転生させたように、己を人と蛇の子として転生させるというものだった。
 サーネリアの反魂を行うとき、それに用いた反魂用の肉体に、ザッハークは自ら精を注ぎ込んだのである。サーネリアの胎を割いて生まれ堕ちたザッハークは、こうしてファラクの支配を脱し、人と蛇と邪霊の力を併せ持った“人蛇王”アジ=ダハーカとして転生する。
 地上へと現れ、ラウを崩壊させて四行詩成就の宣誓を叫ぶアジ=ダハーカ。もはや絶望かと思われたその中でも、人は前を見ることを諦めない。ヴァーシグに残る問いをぶつけ、獄に隠れ潜んでいたサフィーアの魂を見つけ出した一行は、もうひとつの四行詩成就の解釈を手にアジ=ダハーカを追って地上へと出る。
 夜空には四大紫杯連が放った【儀式攻撃式・隕石】の輝き。赤炎に燃え盛るかつての埋没都市を舞台に、決戦の火蓋が切って落とされた。
〈輪廻之轍〉の信奉者や邪霊律「獄王」を用いて次々と邪霊を呼び出し、無数の魔術を用いた怒涛の攻撃の前に、リフラは動きを封じられ、マリヘフは気力を使い果たし、ガシムは獣甲を失ってしまう。しかし、猛攻を耐え抜いたクルシュと、そしてサーネリアが立て続けに呼び起こした【戦闘援護式・召喚】の輝きと共に、自由を取り戻したリフラを合わせ3対の羽をはためかせた金糸雀の輝きは、ついにアジ=ダハーカを滅ぼすのだった。

 

第3部最終話 階梯なき王に挑むものたち/勝利の塔に挑むものよ

そこを昇ることができれば邪霊の王イブリスの居城へとたどり着けるという、ジグラットの幻鏡域、果て無き塔〈ラトイーン〉。サフィーアからイブリスの真名である「ア・バオ・ア・クゥー」を聞き出した一行は、その長き長き塔を昇る。
 煉獄を脱するため。地上へと辿り着くため。己が目的のため。世界の真実を知るため。それぞれの目的を胸に進む彼等は、途中、いくつもの謎や得体のしれない弱妖と出くわしながら、数十日の時を費やしてついに頂上へと辿り着く。
 が――そこに雷鳴を引き裂いて急襲する巨大な影。
 首領級邪霊アルゴルが、ついに自ら手を下すため現われたのだ。圧倒的な力の前に、必死の抵抗もむなしく命を落とすガシムとマリヘフ。
 堕落をしてまで耐え抜いたクルシュとリフラだが、もはや抗する術もない――そう思われた時、クルシュが連れてきた弱妖が、突如神々しい姿を取り戻す。「ア・バオ・ア・クゥー」はラトイーンを昇りきった者の前に真の姿を見せる。その言葉通り、現われたイブリスは『人間は地上の支配者になるに相応しくない堕落したものであるか否か』を判別するという邪霊の本分を見失ったアルゴルを消し飛ばす。

 ついに煉獄始まって以来初めての訪問客としてイブリスの居城へと招かれたクルシュたちは、そこでイブリスにいくつかの質問をぶつける。邪霊よりもラウよりも、はるか先を求めるリフラには、今度も良き友人となることを。ラウの心の真実を求めたガシムには、自分もまたそれを聞けず、今は孤立しているのだということを。父の面影を超えることを選んだマリヘフには、アムシャドを自分が地上へと招いたことを。
 そして、
「――寂しくはないか」
 クルシュのその言葉を聞いて、イブリスはしばし呆然としたのち、彼はまこと、ラウの御心にかなう地上の支配者となりうることを認めた。
 しかし、クルシュは享受者である。邪霊の力、天使の力を得た人間は、そもそもラウの作りたもうた「土と水」より生まれた存在からは変質しているのだ。イブリスの本当の望みは、人間がただの人間のままとして、このラトイーンを登り切ってくれるということだった。
 イブリスはクルシュに、透明な液体を注いだ一つの杯を差し出す。それを口にすれば、クルシュは享受者の力を失いただの人間となるだろうことを告げ、今度は人間としてこの塔を昇って来てくれるかと、そう問うた。
 応じて杯を取ろうとしたクルシュに、しかし皆は応じなかった。ハマーディーンに杯を取ろうとした手を掴まれ、そしてクルシュは決意する。
 また、この煉獄に生きることを。
 イブリスは微笑みと共にそれを見送る。この煉獄、人が生きるにはあまりにも過酷で、残酷な世界。けれど彼等はなお、そこで己として生きることを選んだのだ。

このページの添付ファイル