輝くオーロラの髪と羽を持つ少女の姿をした妖精。だが、見た目とは裏腹に、その力は魔王と呼ばれるアヤカシに勝るとも劣らない。北欧ラップ族風の装束を身に纏っているが、元々は古代ゲールの素早き者、陽気な踊り手といった異名を持つフィル･チリースという小さなオーロラの妖精である。本来その力は決して強いものではない。伝承を背景としたアヤカシがそれに分不相応な力を持つことは通常不可能であるからだ。また、伝承の変性は易々と己の存在に影響を与える。かつて多くのアヤカシがキリスト教の拡大によって神や精霊から悪魔に姿を変えたように。
　しかし、彼女はアヤカシには似合わない好奇心といたずら心、そして僅かばかりの向上心によって自らの根源を変性させることなくその限界を突破したのだ。その方法というのは何のことは無い。ただ生まれた場所を飛び出しただけである。だが、彼女のような者にとって、それは存在の消失を意味する。だが、異郷の地で朽ちかけ、侵食を受けながらも、彼女は己の根源を失わなかった。それは、彼女を縛る伝承の規模が巨大でなかったからなのか、空に輝く極光に故郷と自分自身を見出せたからなのか、それとも失いたくないものがあったからなのだろうか。真実は分からないが、彼女は自分を保ちながら、異なる伝承の中で生き残ることに成功した。
　こうして彼女は世界中を巡り、各地の伝承に触れ、それらの力を得ることで、強大な力を持つに至った。ゲールの伝承がキリスト教に影響され、フィル・チリースが妖精から堕天使となっても彼女の本質は変わらなかった。オーロラは北欧では火狐の尻尾の輝きであり、古代中国では偉大な竜が空を舞う姿を表す。エスキモーが伝える魂を導く極光を空に躍らせ、ヨーロッパの人々を恐慌に陥らせた赤きオーロラは見る者を狂気に誘う。２千年を超える年月を生き抜き、地球上の気象現象よりも遥かに巨大な宇宙現象であるオーロラを自在に操るまでになったのだ。その片鱗を知るものは、彼女のことを“神苑の極光”ノーズル・リョス（アイスランド語で北極光の意）と呼び恐れている。さらには、オーロラに捕らわれた衛星をも支配しており、この災厄前の忘れられた気象衛星は、彼女の力を更に強大にしている。彼女は現代の新しい神話、テクノロジーをすら自らの力と出来るのだ。最も彼女にしてみれば、衛星のＡＩをして新しい友達が出来たといった具合のようだ。移ろいゆく伝承によって、厳密に彼女と同じフィル・チリースが存在しない今、この新しいＡＩは彼女の数少ない気を許せる存在なのかもしれない。
　このように、彼女の真の力はオーロラに関するあらゆる伝承を自らの力と出来ることである。しかし、相変わらずちっぽけなものに興味を持ち、怒ると手は付けられず、気に入ったものには好意的、誰かにオーロラを見せてはその反応に一喜一憂するという振る舞いには、そのような強大な力とは不釣合いな感が否めず、良識ある永生者は眉を潜めることもある。だが、自然の一部である彼女は、悠久の自然が経てきた年月に比べれば自分など取るに足らないと思っており、まだまだ落ち着く気は無いようだ。まるで、それが失ってはならない自分なのだと、言わんばかりに。


「闇に煌け、神苑の極光！　虹爆『ディソシエーションアース』！！　　――――ブレーク・アップ！！」


　好きなうまい棒はマリンビーフ味。マリンビーフとはマグロのことだが、最初はウミウシだと思っていた。生地に練りこまれた濃厚な味はマグロを髣髴とさせるに十分であった、らしい。が、実は正体はマグロではなくイカとビーフの組み合わせで、つまり「海の旨みと牛肉の旨みの融合」を目指した意欲作だと知り、その哲学的な何かと脅威の技術に驚愕したとか。今は幻となったが、再び巡り合える時は来るのだろうか。

経験点消費：713
▼能力値上昇：180
▼技能修得：290
▼ブランチ修得：20
▼常備化：343